『青春とは』サミュエル・ウルマンの詩
アンティエイジングを意識してこのブログを始めた以上、避けて通れないのが「抗老化」とは一体どういう意味で言うのか、という問題です。これは私自身がまず明確にしないと先に進みません。ここでちょっと寄り道をして、原点にもどりたいと思います。
アンティエイジングを「抗加齢」という人もいますが、これはちょっと問題があります。年齢を重ねるのは防ぎようがないからです。日本社会では否応なしに誕生日がくれば、またひとつ歳をとらなければならないようになっています。また至る所で年齢を記入させられます。わずらわしい思いをするのは私だけではないでしょう。
正しくは「抗老化」だと思います。老化には肉体面と精神面の両方があります。身体の老化には抵抗する方法はあり、テレビ、雑誌、新聞、その他関連する業界では死んでも健康でありたいと願う人たちで商売繁盛の様子です。しかし、本当の老化は精神の方がはるかに大事な要素であると常日頃から思っていました。そこで、英語との関連からサミュエル・ウルマンの『青春とは』という、知る人ぞ知る詩を取り上げてみようと考えたわけです。
まず英語を何回も読み返して、「青春」の真意をくみ取ってください。なお、私の訳文は出来るだけ原文に忠実に、平易な日常語に訳してあります。詩的な表現で日本語として味わってもらうのが目的ではなく、あくまで英語原文の味わいを重視して、その理解の一助としての訳文としたいからです。
読めば読むほど、これこそ「アンティエイジング」の真髄ではないかと思わせる、味わい深い詩ではないでしょうか。
YOUTH by Samuel Ullman (1840-1924)
Youth is not a time of life;
It is a state of mind;
It is not a matter of rosy cheeks, red lips and supple knees;
It is a matter of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions;
It is the freshness of the deep springs of life.
Youth means a temperamental predominance
Of courage over timidity of the appetite,
For adventure over the love of ease.
This often exists in a man of sixty more than a boy of twenty.
Nobody grows old merely by a number of years.
We grow old by deserting our ideals.
Years may wrinkle the skin,
But to give up enthusiasm wrinkles the soul.
Worry, fear, self-distrust bows the heart
And turns the spirit back to dust.
Whether sixty or sixteen,
There is in every human being's heart the lure of wonder,
The unfailing child-like appetite of what's next,
And the joy of the game of living.
In the center of your heart and my heart
There is a wireless station;
So long as it receives messages of beauty,
Hope, cheer, courage and power
From men and from the Infinite,
So long are you young.
When the aerials are down,
And your spirit is covered
With snows of cynicism and the ice of pessimism,
Then you are grown old, even at twenty,
But as long as your aerials are up,
To catch the waves of optimism,
There is hope you may die young at eighty.
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『青春とは』サミュエル・ウルマン (1840-1924)
青春とは人生の一時期をいうのではない
それは活動する精神の状態をいうのだ
それはバラ色の頬のことではなく、赤い唇でもなく、しなやかな膝のことでもない
それは意志に係わること、高みを目指す想像力のこと、あふれんばかりの情緒の豊かさのことなのだ
それは生命の深みから湧き出る清冽な泉のことをいうのだ
青春とは、ともすれば臆する本能の弱さに挑み
安逸の日常よりは冒険を求める、
そのひたむきな勇気が支配する精神の状態のことなのだ
この精神は二十歳の若者ではなく齢六十の男に宿るのもまれではない
ひとは単に年齢を重ねるがゆえに老いるのではない
理想を置き去りにすることで年老いてしまうのだ
歳を重ねれば皮膚のしわは増えるであろう
だが熱意を捨てることで魂にしわがよる
悩み事、恐れ、自己不信、これらが心をくじく
そして生きる意欲を灰燼のごとく捨て去るのだ
歳は六十であれ十六であれ
あらゆる人の心には新しい驚きを発見する意欲
子供のように次に来るものを期待するあくなき好奇心
そして生きることの遊びとしての楽しさが息づいている
あなたの心にもわたしの心にも
中には無線通信装置があるのだ
美、希望、歓声、勇気、力のメッセージが
他の人々から、また無限界の存在から受信できる限り、
あなた心はいつまでも青春なのだ
だが、ひとたびアンテナが降ろされ
精神が冷笑を含んだ重い雪、悲観で固まった氷で覆われたとき
歳はたとえ二十歳であろうとも、そのときあなたは年老いるのだ。
しかしアンテナが空高くのばされ、
楽観の波長をとらえ続けるかぎり
齢八十にして青年として死する望みも叶うのだ。
(訳文責:島村政二郎)
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[注釈]
*aerial
サムエル・ウルマンはアメリカに移住したユダヤ系のドイツ人で、この詩が書かれたのはタイタニック号の遭難事件のあった1912年から遠くない時期だと思われる。この詩の中には”aerial”(アンテナ)という最近では使わない言葉が出てきますが、これはタイタニック号の救助活動に当時まだ普及し始めたばかりの無線交信技術が大きな役割を果たしたことから、ウルマンも特別の意味をこめてこの言葉を使っているようです。
*temperamental predominance
ときには狂うような激しさの気性が支配する状態のこと。
*appetite
食欲にとどまらず、肉欲、名誉欲、金銭欲など、ついつい人を臆病にして冒険を避けるような誘惑のことを指すと解釈します。
[参考資料]
手島佑郎氏の「青春」の英語原文資料、およびタイタニック号についての解説を参考にさせて頂きました。参照先:http://www16.0038.net/~gilboa/Ullman_Poetry.html
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