Singapore Airlines Suites on A380
On 25 October 2007, the world's first A380 operated by Singapore Airlines made its historic first flight from Singapore to Sydney.
「処女飛行」という言葉はもう使われなくなった気がしますが、TIME誌に2週連続掲載の3ページ広告では「歴史的初飛行」という色気のない言葉を使っていました。あのロマンティックな響きの「処女飛行」はなにか女性の気にさわる差別用語とされているのでしょうか。
SQ's A380 is designed to carry 471 passengers in the grandest style. The cabin is configured in three classes: 12 Singapore Airlines Suites, 60 Business Class seats and 399 Economy Class seats.
最新鋭エアバスA380のシンガポール・シドニー間の「歴史的初飛行」は製造技術上の問題で予定より1年遅れの出発になりました。総二階建ての世界最大の旅客機の内部仕様はシンガポール航空(SQ)の特注で、スペースゆったりの471席におさえた仕様になっています。その飛び出るような目玉はやはり、ファーストクラス。なんと、お二人利用ならコンパートメントの仕切りをはずせばダブルベッドのプライベート空間にもなるという。その一点だけでも注目を集める効果は抜群でしたが・・・
"Singapore Airlines Suites"の広告キャッチにも思わせぶりな表現が見られます。
"haven of tranquility" (静寂の住処)
"unprecedented level of privacy"(かつてないプライバシーの世界)
"exclusive dining when you want it"(お好きな時にプライベートなお食事を)
"indulge your senses"(五感を心ゆくまで堪能)
(注釈: Senses = taste, hear, see, smell, and touch)
CNNネット版を覗いてみると、早速CNNの著名記者リチャード・クエスト氏が搭乗し、機内からファーストクラスをレポートしていました。それはSQが先手を打って、機内での行き過ぎた親密な行為は慎むようにとの次のようなお達しが注意をひいたからなのです。
"We ask customers to observe standards of behaviour on the aircraft that don't cause offense to customers or crew."
この表現で面白いのは「他のお客様だけでなく乗務員に迷惑になるような・・・」の乗務員です。これはおそらく乗務員が行き過ぎた親密な行為を見つけてもどうしていいか分からないから困るのですよね。五感を堪能しているカップルにどうやって注意すればよいのか、まだ客室乗務員用のマニュアルも原稿段階かもしれませんね。
そもそも「ルール」というのは、できるだけ多くの人がご気分を害さずにいられるための最低限の決まり事ですから、大金を払った大事なお客様がルールを破ったからといって恥をかかせるのはルール本来の目的ではないし、むずかしいでしょうね・・・。
さて、クエスト記者は早速ファーストクラスを点検し、通路側のドアを閉め隣席とのパーティションをはずせば、ハリウッドツインのダブルベッドとなる快適な空間に変身するのを確認。次いで同乗のシンガポール航空会長のチュウ氏にインタビュー。会長のご自慢はそのスペースと快適さ、とまで言ったのはいいですが、クエスト氏がすかさず「あの快適でセクシーなダブルベッドはなんのため・・・」。会長は言葉につまりながら、「まあ、旅のロマンスを空の上にもとの願いなんですが・・・」
クエスト氏が実際に使った言葉は"sexy"ではなく"lacy"であったことを付け加えておきます。女性の下着に使う"lace"からきた言葉で、「セクシー」とか「思わせぶりな」という意味でよく使われます。なにしろ、広告の見出しの"indulge your senses"そのものがかなり"lacy"な表現です。五感には触覚も入るのですから、二人だけのプライベート空間でこれを堪能するには一体どうすればいいのでしょうか・・・。
念のため、このコンパートメントは四方は完全に閉じることができるものの、天井はなし、背の高い人が覗き込めば上から覗ける、隣席とのパーティションは薄く防音にはなっていない。というわけで、安心して親密なロマンスを実行するには確かに問題ありと思った方がよさそうです。
しかし、人間考えることはみな同じ、ということは航空会社も周知のはずです。あのプライベート空間の中では当然、"extra activity"があり得ると想定すべきで、そうでなければビジネスクラスでも十分過ぎるくらい快適な造りになっています。
ちなみに、シンガポール・シドニー間のSQスウィート料金は一人片道$4000、二人で$8000です。帰りはエコノミーで十分です、念のため。というのは、せっかくスウィートクラスを奮発してカップルで行ったのに、自慢の種にしようと思った肝心のことが果たせず、帰りの道中は二人とも口も利かない仲になっているに違いないからです!
シンガポール航空はたえず革新を続けるエアラインですが、今回のA380は功罪半ばした「処女飛行」だったのではないでしょうか。子供のように目を輝かせていたクエスト氏もちょっと期待感をそがれた感じで、CNNニュースの見出しは"Mile High Passions Grounded"(天翔る情熱地に墜ちる)となっていました。
近い将来同型機を導入する他のエアラインがどういう仕様にして、どういうプライバシー・ルールを設定するか、高見の見物客として今後の展開が楽しみです。
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